【2019年立入禁止】遠い遠い東チベットの絶景、アチェンガルゴンパ - 前編

f:id:urban-dog:20190626230832j:image

死ぬまでに行きたい場所や、もう一度見たい風景。
旅行好きの方なら一ヶ所はあると思います。

しかしそういう風景は、国の情勢や天災により、見れなくなったり風景自体が失われる事があります。

東チベットの絶景「ラルンガルゴンパ」と「アチェンガルゴンパ」。

この二つの絶景は、『死ぬまでに行きたい場所や、もう一度見たい風景が見れなくなる』ことを、身をもって感じさせてくれた場所でした。

今回は、昨年2018年の夏に、外国人の入場が制限される前に行ったアチェンガルゴンパについてのお話です。

そもそも東チベットとは?

チベットとは、中国南西部のチベット人を中心とする民族が分布するエリアの総称で、有名なのは、歴代のダライ・ラマが住んでいたポタラ宮のあるチベット自治区。

そして今回訪れた東チベットは、そのチベット自治区の東側、四川省の西部と雲南省の北西部に広がるエリアです。中国でも有数の絶景がひしめくエリアで、極彩色に輝く美しい湖・九寨溝もこの東チベットエリアといわれています。

f:id:urban-dog:20190626231352j:image

九寨溝の風景

旅行者にとって東チベットの素晴らしいところは、ポタラ宮のあるチベット自治区はパーミッションと呼ばれる入境許可証が必要なのに対し、東チベットはパーミッションの必要がなく旅行ができ、そのことが、旅行者の心を惹きつける一つだと思います。

「ラルンガルゴンパ」と「アチェンガルゴンパ」

f:id:urban-dog:20190620112238j:image

安宿に飾られたラルンガルゴンパの写真

チベット仏教の高僧が辺境に移り住み、その教えを求め万を超える教徒が集まり住み、そして生まれた絶景と言われるのがこの2つの風景。

平均4000mを超えるチベット高原の自然と、チベット仏教特有の紅色に塗られた無数の住居が生み出す風景は、自然遺産と文化遺産の極みともいえる景色で、世界一周をした旅行者が口をそろえて、『深く深く心に残る風景』と言うほどの、世界でも有数の絶景といわれています。

しかし、2016年頃にラルンガルゴンパが、そしてつい最近、2019年4月にはアチェンガルゴンパが外国人の入場が制限され、見ることができなくなりました。
ラルンガルゴンパに至っては、すでに取り壊しが始まり、風景自体が失われているそうです。

急いでアチェンガルゴンパへ行かないと…

ラルンガルゴンパとアチェンガルゴンパを知ったのは数年前に中国を旅行していた時でした。

日本に帰宅する数日前に、四川省の中心部成都の安宿で日本人カップルに遭遇し、東チベットに素晴らしい絶景があることを写真のデータを見せながら教えてくれたのが始まりでした。
その風景がラルンガルルゴンパと今回のアチェンガルゴンパ。

この二つの絶景は、どちらも成都から2日程かかる場所にあり行くのは困難だが、それだけ価値のある風景だと熱く熱く語ってくれました。
その二人のカップル曰く、ラルンガルゴンパはすでに中国人の団体観光客が大量に押し寄せ文化的なものは失われつつあるが、景色はすごいと。そしてアチェンガルゴンパは、ほとんど観光客もいないため
まだまだ濃厚なチベットを感じることができると教えてくれました。

この話を聞き、数年内に必ず行こうと心に決め日本に帰国しました。

そして数年後、心のどこかに東チベットに行きたいという気持ちを持ちながらも日常が流れていたある日、何気なくネットで『ラルンガルゴンパ』と検索をかけて衝撃を受けました。

『ラルンガルゴンパ、外国人の入場制限…。』

ドキッとしました。
「もうラルンガルゴンパを、この目で見ることはできない。アチェンガルゴンパもそのうち見れなくなるかも…」

これはまずいと強く思い、直近の長期休暇である夏休みを使って、まだ見ることができるアチェンガルゴンパの方に急いで言ったのが旅の始まりです。

遠い遠い道のり

高度順応を含めて2日半。
日本からアチェンガルゴンパまでかかった道のりです。

四川省の東チベットエリアにあるアチェンガルゴンパへの度の始まりは、四川省の省都・成都から始まります。

成都は人口1000万人を超える中国西部の中心都市。
そもそも、四川省だけで人口が8000万人を超えるって…、中国半端ないです。

成都市内や成都近郊にも、世界一大きな大仏「楽山大仏」やパンダがたくさん見れる「成都パンダ基地」など見どころはたくさんあるのですが、今回は遠い遠い東チベットに行くため、空港から長距離バスのバス停に向かい、すぐ成都を離れました。

中国表記で「新南門車站」。このバス停から東チベットへの旅は始まりました。向かうべきは、アチェンガルゴンパの拠点になる甘孜(ガンゼ)。

成都から20時間ほどかけて直接ガンゼまで向かうことも可能なのですが、標高3300mを超えるガンゼに一気に向かうと高山病にかかる危険性もあるため、高度順応のための中継地として標高2,500mの康定(カンティン)で一泊し、翌朝ガンゼに向かうルートを取りました。

  • f:id:urban-dog:20190620142951j:image

    バス停近くの飯屋

  • f:id:urban-dog:20190623195327j:image

    裸にエプロンの店主

成都からカンティンまで長距離バスで10時間。
先にチケットを購入し、バス停近くの飯屋でササっと朝食をとって、バスへ乗り込みます。道中、高速道路建設に伴う大幅な渋滞もあり結局14時間かかりました。
そして翌朝6時の長距離バスに乗り甘孜まで8時間の道のり。

中国の長距離バスは基本的に夜行はなく日中での移動になります。
夜行だと「寝て起きたら到着していた」ということが可能ですが、日中の移動だと、リアルに距離感と時間を感じずにはいられません。
2日続けての長距離移動は結構きつかったです…。

しかし、カンティンを経由したため高度順応の方は完璧で、ガンゼについたときには当日から街歩きが平均的にこなせる状態でした。

拠点となるガンゼ

この街に来ると、成都やカンティンではあまり見かけなかったチベット僧をよく見かけるようになります。
チベット僧特有の紅色の袈裟に身を包んだ人を街のいたるところで見るようになると『遠いところに来たんだなぁ』としみじみ思います。

この街からアチェンガルゴンパまで2時間半程で行けるのですが、交通手段となるのが乗り合いのバス。
バスといっても、標高の高い場所でも良く走るSUV車なのですが、とにかく満員になるまで出発しないのです。朝から行っても満員になるまで平均2時間程かかるちょっとした運試しの移動手段で、昼から言って満員になることはほぼ望めないそうな…。

夕方前に到着したガンゼ初日はちょっとした街ブラですまして、翌朝に備えます。

ちなみに、国土がアメリカと同じくらい広い中国ですが、時差がありません。通常では2.3時間時差のあるこのガンゼでも、首都北京と同時刻。夏の朝の6時でもまだ暗く、夏の夜19時でももう真っ暗です。

翌朝、同じ安宿に泊まていたアチェンガルゴンパ目当ての人と、乗り合いバスで目的地に向かいました。待つこと1時間45分、トヨタのSUV車はチベット族の家族を乗せ満席となり出発しました。

道中、パスポートを見せたり見せなかったりの検問が2度ほどありました。そして車窓から見える標高4000mを超える峠の景色は見事でした。

f:id:urban-dog:20190620143000j:image

道中の風景

数年前に夢見た、アチェンガルゴンパを見れる気持ちの高鳴りとは裏腹に、車の揺れと、ぎゅうぎゅうに押し込まれた車内の温かさで、ついうとうとしてしまいます。
そして2時間半後、アチェンガルゴンパへの続く最後の一本道を通り、ついに入境となります。

つづきは後編へ・・・