【インド:アダーラジ階段井戸】イスラム・ヒンドゥー彫刻が美しい、井戸建築の最高峰

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インド北西部アーメダバード近郊に、美しい建築がありました。

柱や梁に掘られた繊細な彫刻が強い強い日差しを受け、キラキラとその美しさを表現していました。陰影が生まれた柱や梁の装飾は、華やかさと荘厳さを兼ね備え、たくさんの人が訪れる場所となっています。

その場所の名前は、アダーラジ階段井戸です。

インド北西部の都市アーメダバード

インド北西部、グジャラート州にあるアーメダバード。ニューデリーやジャイプルから南へ移動する際、必ず通るくらい大きな街ではないでしょうか。

近代的な都市で、中心部に鉄道駅と南北に流れる川があり、街が放射状に広がっています。郊外に工場が多く、経済的には恵まれているそうです。他の都市で当たり前に見るインド特有の「貧しさ」のようなものは、あまり見かけませんでした。

雨季と乾季にハッキリ分かれた地域で、雨季にはインド洋からのモンスーン(季節風)で大量の雨が降るのに、乾季には全くと言っていいほど雨が振らない。そういった土地柄のため、この地域には多くの階段井戸が作られたそうです。

前回訪れた逆ピラミッド型の階段井戸やダーダーハリ階段井戸も同じような理由で作られたようですが、今回訪れたアダーラジ階段井戸も、そのうちの一つです。

 

前回の記事はコチラ↓

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アダーラジ階段井戸

アクセス

STCバススタンド

STCバススタンドの場所はこちら»

バスで片道約1時間(25ルピーくらい)

アダーラジ(Adalaj)  

徒歩で約5分

階段井戸  

アダーラジ階段井戸は、アーメダバードから北に19キロほど行ったところにあります。
行き方は、アーメダバードのSTCバススタンドからガーンディーナガル行きのバスに乗り、アダーラジで下車。片道約1時間で25ルピーくらいだったと思います。そこから徒歩5分くらいで到着。

階段井戸までは一本道で、有名な観光地なので『バーオリ?(階段井戸)』と聞けばすぐわかります。入場料は無料でした。

淡い石色とビビットなサリー

アダーラジ階段井戸は、地上部分に三方ある入り口から一つの踊り場に一旦下り、そこからさらに井戸に下りていく構造です。その踊り場から見える風景がまず美しかったのです。

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サリーの色彩が映える!

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彫刻の繊細さ!

この地域特有の石なのでしょうか、淡い黄色味がかったパステスカラーの石の柱や梁に、繊細な彫刻が彫られています。その彫刻が強い日差しを受けて深い陰影が生まれ、美しさと寺院のような荘厳さを生んでいます。

この井戸はインド人にも人気の観光地らしく、たくさんの人がいたのですが、課外授業で来ていたと思われる女子学生達の、彼女達の色彩豊かな服装と淡いパステルカラーの階段井戸の色味が、カラフルな絵画のような楽しい風景を生んでいました。

水を汲み、涼をとる場所でもある

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    柱の装飾

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    下に行くほど光が届かず涼しい

階段井戸は下まで降りれるようになっています。
階段自体は段差も低く非常にゆったりした作りになっています。定期的に立ち止まりながら少しずつ下って行ったのですが、下に行くにしたがって水場が近くなり日陰も多くなるため、外気に比べてひんやりと涼しさを感じるようになってきます。

そう、この階段井戸には、人々は水を汲みに来るだけでなく日中の暑さをしのぐための場所でもあったそうです。この階段井戸に腰掛け涼みながら物思いにふけ、そしてご近所さんと世間話をしていたのでしょうね。井戸端会議とはよく言ったものです。

そして、下りていく度に目に入る一つ一つの彫刻がまた素晴らしい!

ヒンドゥー様式とイスラム様式の融合

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寺院を思わせる荘厳さ

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水平方向・垂直方向どちらにも力強い

現在ヒンドゥー教徒が多くを占めるインド、この井戸の建設を命じたのもヒンドゥー王朝の王妃によってだそうですが、その後、この地域がイスラム教徒によって統治されたため、この井戸を完成させたのはイスラム教徒なのだとか。
そのためヒンドゥー様式とイスラム様式が融合された珍しい井戸建築なのだそうです。

完成させたのはイスラム教徒ということで、偶像を思わせる人物を思わせる彫刻はありません。主に植物や動物の装飾が多く見られます。その量と繊細さが突出してます。

梁の側面部や柱の上部のいらるところに彫刻が施され、水平方向・垂直方向どちらにも目が行ってしまいます。それが下へ下へ、最深部は5層にもなっていました。これが地下ではなく地上に立ち上がっていたら、どれだけの存在感を示していたのでしょうか…。

まとめ

広い国土と長い長い歴史を持つインド。

仏教が生まれ、イスラム教が一時統治し、そして現在は、多くがヒンドゥー教であるインド。宗教という力を建築に注ぎ込み具現化した物のパワーは本当に恐るべきもので、そこに込められたパワーが、何百年も後世に残る遺産を生み出したのでしょう。

テクノロジーを駆使し効率的に建てられる現代建築は、数百年前に作られたこういった建築に、はたして勝てるのでしょうか?そんなことを遠い国インドで思ってしまいました。

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おまけ

インドは面白い国です。
街をぶらぶら歩いているだけで日本ではちょっと考えられないような風景に出会います。 写真は路上で散髪と髭剃りをする人。日本での当たり前が簡単に崩れちゃいますね。