「チャンドバオリ(インド)」の階段井戸に刻み込まれた、数式的美しさ!
ゼロの概念発見の国、IIT(インド工科大学)の躍進、九九(くく)は十九×十九まで覚える…。数学(理数系)の分野において、インドの突出っぷりは有名です。そして、1000年前に作られた、雨水を貯める井戸の建築技術においても、そんな数学的頭脳を感じるものがありました。
チャンドバオリの階段井戸
雨季と乾季がはっきり分かれたインド北西部のラジャスターン州では、かつて雨水を貯めるための施設が数多く建設されたそうです。場所や時代が違えば大きさも形も大きく異なってきますが、このチャンドバオリの階段井戸は、その形も大きさも特に特徴的でした。
アクセス
この階段井戸は、デリーから南西約260km、ラージャスターン州の州都ジャイプルから、東へ約100キロの所にあるチャンドバオリという小さな村にあります。ピンクシティとして知られるジャイプルの観光と合わせて行くのにも良い場所。
行き方は、まずジャイプルのセントラルバススタンドに向かいます。
そして、そのバススタンドからアーグラー行きのバスに乗りスィカンドラまで。所要時間2時間弱、93ルピー(160円ほど、安!)でした。
長距離バスの車内
時間の遅れや分かりにくさで有名なインドの列車ですが、長距離バスは非常に快適。
私が乗ったバスは、車内はエアコン付きでシートはリクライニング機能あり、上部にフラットで寝れる座席まであったりで、言うことなしの快適さでした。
周りは何もない小さな村
スィカンドラ到着後は、オートリキシャを捕まえて『チャンドバオリ』と伝えるか、階段井戸の写真の指差しで意思疎通。約20分程で、チャンドバオリ村に到着です。
周りには何もない小さな村なので、柵で覆われた階段井戸の入り口はすぐわかると思います。
入場料は無料でしたが、寄付程度のお金を求められたような気がします。
逆ピラミッド型の不思議な井戸
この摩訶不思議な階段井戸の建築は、1000年以上前、約8~9世紀頃、この一帯を治めた王により公共の井戸として建設されたそうです。一辺約30m程のこの井戸は、四角くとられた回廊の中心部分に、逆ピラミッド型に深くなっていき、深さも30mほどあるのだとか。
また、井戸の底の方は、地表からの深さと水の存在で天然のクーラーのような機能を果たすため、この階段井戸は単なる水の供給場所としてではなく、王族の避暑地や市民の憩いの場になっていたそうです。
井戸を囲った三辺に、無数に存在する階段と踊り場。そこにたくさんの市民が腰掛けた姿を想像すると、何だかいい場所ですね。
規則正しく並ぶ階段
深さ30m、13層の階段と踊り場で構成された階段は、まるで数式を当てはめたように、どこまでも規則正しく、無限に続くように並んでいます。
装飾をせず機能性だけをどこまでも追求すると、このような美しさが生まれるのでしょうか。
このスケール感!
13層からなるこの階段井戸。深さ30m(マンションだと10階くらい?)。
手すりもないため、足を踏み外すと大変なことになりますね。
ダーダーハリ階段井戸
チャンドバオリのあるラジャスターン州の南、インド西部グジャラート州の都市アーメダバードにも、少し趣の違う井戸が存在します。
アーメダバード鉄道駅から北へ2キロ
その井戸は、アーメダバードの鉄道駅から北へ2キロほどの位置にあります。
アーメダバード駅の大通りのある西側出口から、北上するオートリキシャを捕まえて向かうといった感じでしょうか。
時間は10分もかからずすぐ着きました。片道50ルピー程度。
チョロQのようなオートリキシャ
井戸の周囲はごく普通の住宅街といった感じで、昼過ぎに行きましたが井戸近辺にはほとんど人はいませんでした。
非常に静かな環境のなか、役目を終えた井戸がひっそりとたたずんでいます。入場は無料。
イスラム教の長方形型の井戸
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地上部分
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中は地下神殿のよう
地上部分からは全貌はあまり見えず、丸と四角い開口部がぽつぽつ空いている程度でしたが、その開口部から下をのぞくと奥深い建築空間が広がっていました。
このダーダーハリ階段井戸は、15世紀に当時のイスラム政権によって作られたものたそうです。
五層で構成された深い井戸で、下への奥行きを強く感じます。柱や梁にはイスラムを思わせる植物の装飾も施されていて、静かに美しいです。
また、光は上部の開口部からのみなので、朝や夕方は日が傾いているため薄暗く、日中は少し明るくなるといった感じでしょうか。
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下から見上げると…
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社会科見学中?
下層に向かうにしたがって、暗く静寂に包まれます。直射日光を遮るためヒンヤリと涼しい。
お揃いの制服がかわいい
私が行ったときは、ちょうど小学校の社会科見学と鉢合わせしたため、子供の声が響いていましたが、それ以外に人はほとんどおらず、静かにゆっくりとこの空間を楽しめると思います。
まとめ
雨季乾季がハッキリ分かれたインド西部は、昔から水の確保が死活問題事だった予想されます。そして、その水を確保するための井戸の建設にも、非常に大きな力が込められたことが伝わってきました。
チャンドバオリとダーダーハリ階段井戸。時代や場所が変われば井戸の形態もこれほど大きく変わるんですね。